近年は学歴不問の求人が増える傾向にありますが、不動産業界は昔から学歴があまり関係のない職種とされてきました。しかし業界での成功や、安定して働くためには、学歴以外に何が大切なのかも気になるところです。この記事では、不動産業界が学歴不問でも活躍できる魅力と、何を身に付ければうまく働けるかについて解説します。
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・不動産業で働くには学歴が必要か知りたい
・不動産の仕事は何が大切か知りたい
・待遇差のない業種に応募したい
不動産志望に学歴が不要な理由
不動産業界は、基礎学力に問題がなければ学歴は気にしないという採用基準が多いです。まず、なぜ学歴が高くなくてもたくさんの人が活躍している業界なのかを解説します。
実力主義
不動産業界は総合職と一般職の区別が薄く、一部の大手企業を除いて、一人の社員が何でもできる少数精鋭的な傾向があります。
住居の移転を伴うような大きな人事異動が少ないことも、ますますその傾向を強くしていると言えるでしょう。
したがって分業制や業務分担の縄張り意識が薄く、社内でいろいろ学んで他の社員の人と関わりながら仕事を覚えていきます。
また、経営陣も同様の環境で、学歴にこだわらないキャリアを積んできており、「部長以上に昇進するには大卒以上が基本」という会社はほとんどありません。
重視されるのは行動力や、効率よく仕事を進めること、売上を作れることに尽きます。理屈よりも行動重視で、いろいろ試して経験でノウハウを身に付けるのが、不動産業の良い点かもしれません。
人材不足
不動産業界は慢性的な人材不足で、とくに営業職は常時募集や採用をおこなっている企業もあります。
ブラックで定着率が悪いという傾向ではなく、需要に時期や景況による業態ごとの波があることも影響しています。
不動産業界の人材不足の傾向は、数字でもはっきりしており、以下の統計では2022年は持ち直しているものの、基本的に後継者不足などから減少傾向が続きます。
2021年:入職者 87.2万人 離職者 90.7万人
2022年:入職者 146.4万人 離職者 109.7万人
厚生労働省『令和4年雇用動向調査結果の概況」
学歴で選別する意味がない以上、採用の間口を拡げるためにも「学歴不問」と掲げる企業が多いという理由も挙げられるでしょう。
また、不動産業は仕事がキツイというイメージから、人材の需要と供給のバランスが改善されていない点も、常時募集の背景にあると言われています。
不動産関連の諸法令は、30年以上かけて不正業務ができないように改正されているため、不動産業を取り巻く実態も年々変化しています。
こちらの記事も合わせてご参考ください。
>>不動産営業は本当にきついのか?その理由と転職時の注意点を解説
効率よりもやる気
不動産業界は、現状まだDX(デジタルトランスフォーメーション)を通した売上増や業務の効率化などが、後回しの傾向にあります。
そのため、デジタルの得意な人材・思考力や調査力などの頭脳労働向きの人よりも、やる気や行動力の人を優先する文化があり、学歴不問の一要素となっています。この点は今後見直されても良い面でしょう。
学歴が必要な不動産会社とは?【ごく一部】
一部の財閥系の大手不動産会社で働きたい場合は、学歴が必要となる採用があります。それも、大卒以上ではなく、一定以上の受験偏差値のある、高学歴といわれる大学が対象になります。
学歴に関する採用基準は明らかにはされていませんが、上記の財閥系不動産会社の採用校実績をみると、旧帝大・早慶・MARCH・関関同立などの大学卒業履歴が求められることもあります。
超有名な財閥系不動産会社は、新卒で採用したプロパーを育成する流れが主流で、どの会社も対象となる事業部では、途中採用もほぼないケースが多いです。
ただし、上記で挙げた別の部署や、系列会社では社会全体の流れ同様に学歴・学閥は重視しない傾向が進んでおり、学歴フィルターのない募集もあります。
プロパー採用と待遇などは異なりますが、福利厚生などは充実しているため、自分に合った内容の採用であれば、応募する価値はあります。
また、大手でも電鉄系などは幅広い職種の募集を行っているなどの特徴も見られます。
学歴に関係なく不動産業界で働くメリット
不動産業界で働くにはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、学歴にかかわらず働く上で得られるメリットを解説します。
若いうちから大きな仕事が出来る
学歴がなくとも販売や業務改善などの実績を上げていけば、大きな現場のマーケティングや、大口のクライアントを任されたり、管理職として会社の経営に関わる場合もあります。
また、不動産は取引に伴って動く金額が大きいです。そのため比較的若いうちから大金を扱う方法や経験値、責任を重ねていくことができるのも、他の業界にはあまりない魅力でしょう。
実力主義のため高収入を得られる
先述したように不動産業界は実力主義の会社が多いです。学歴に関係なく、不動産売買の営業でインセンティブ=歩合の収入を多く獲得できれば、年収1000万円以上も可能になります。
職種や会社によりインセンティブの形態は異なりますが、特に単価の高い売買営業を行う場合はインセンティブの利幅も大きくなります。
年齢に関係なく、数字で正当に評価され、ダイレクトに収入につながる点は大きな魅力です。
転職や独立などキャリアの幅が広がる
不動産業界で働くことで、転職や独立などのキャリアの幅も広がります。
不動産業界は同業の横のつながりが広く、一度身につけたスキルが業界の他の会社で活かせるシーンも多くあります。
また、協力体制が強く、独立した方が元の会社と協力して仕事をすることも珍しくありません。ただしどちらもお客さまを抜かない、事業エリアをかぶらせないなど、一定のマナーは存在します。
そして、独立するために学歴が関係ないのは言うまでもありません。
キャリアデザインとしてステップアップの転職や独立を目標にし、自分なりの方法での顧客サービスを試し、提供することも魅力的と言えるでしょう。
不動産業界志望者にあった方がいいものとは?
学歴が関係なく、やる気や行動力が重視される不動産業界ですが、大切なものはそれだけではありません。
不動産で学歴に関係なく成果を出し、長く働くためには、何を武器にした方が良いかを解説します。
先の目標を持つ
先の目標を立て、それに向けて逆算するキャリアプランを作りましょう。たとえば以下のような目標が考えられます。
- 賃貸管理の業務全般と客付けの経験値を身に付け、将来オーナーさまの運用のサポートをする
- 建売の営業で、見込み顧客を常時〇件つくれるようになりたい
- 売上が○○万円を割らないようにする
- 管理する物件の空室率を5%以下に抑える
このように、単純かつはっきりした目標を持つことが大切になります。
目標は状況に応じて修正するものですが、目標があることで何を解決すればよいか、自分自身に何が足りないかを具体化することができます。
資格を取る
不動産関連の資格を取ることで、就業や収入に有利に働きます。その理由は以下の通りです。
- 有資格者でなければできない業務がある
- 有資格者が必要な人数が決まっている
- 資格手当が支給される
- 専門知識が身に付く
- やる気や、努力ができる証明になる
有資格者でなければできない業務は独占業務と言い、たとえば売買や賃貸、管理受託の契約の際の重要事項説明と、契約書・重要事項説明書への記名・押印は宅建士以外の人が行えません。
また、有資格者が必要な人数は設置義務と言います。
例えば宅建業を営む企業の従業員の5人に1人は成年で専任の宅建士でなければならないという決まりです。これにより、不動産会社は欠員や業務拡張のたびに宅建士が必要になります。
宅建以外にも独占業務や設置義務を持つ資格があり、このような需要から、不動産各社は資格手当を設けていることが多いです。
資格手当は、宅建士で月に1万から3万円が相場です。
もし何かの要素で初任給に多少の差があっても、資格の取得で同等かそれ以上の手取り額面になる場合もあります。
資格取得の勉強を通して専門知識が身に付き、取得に向けて時間を割いて勉強するだけの努力や、向上心を証明する物差しにすることも可能です。
また、これはあまり言われることはありませんが、資格の勉強をしていると、不動産の仕事の面白さや意外な側面が分かることもあります。
資格試験の出願・試験は年に一回が基本のため、転職時に資格を取得済みとはいかない場合も多いでしょうが、応募先に「出願済みで受験予定」と言えれば、転職への姿勢を示せるでしょう。
不動産に関連する主な国家資格とその概要は、以下をご参照ください。
資格 | 内容 | 試験概要 | 合格率 |
宅地建物取引士 | 不動産取引の基礎を網羅し、もっともニーズの高い資格。受験資格なし=誰でも受験可能。 | マークシート式 年1回(10月) | 15~17% |
不動産鑑定士 | 不動産の公定価格を判断できる(鑑定評価業務)資格。 難易度で不動産資格の最高峰。鑑定士として独立開業可能。 | 短答式=マークシートと 論文式 短答式(5月) 論文式(8月) | 5%前後 |
賃貸不動産経営管理士 | 賃貸不動産管理業界の宅建士という位置づけ。今後独占業務や設置義務も予想される。 | マークシート式 年1回(11月) | 28~30% |
管理業務主任者 | 管理会社がマンションの管理業務を請け負う際のフロントマンの資格。 管理受託契約の重要事項説明や管理事務報告は独占業務。 | マークシート式 年1回(12月) | 20~23% |
マンション管理士 | マンション管理組合(ユーザー様)側から物件管理のサポートをする。管理業務主任者と相互に問題免除の制度あり。 | マークシート式 年1回(11月) | 8~9% |
2級建築士 | 建築と不動産兼業の会社では武器に。建築物の設計・工事監理は独占業務。 | 学科試験マークシートと 設計製図試験 学科(7月) 設計製図(9月) | 35~42% |
※必要な勉強時間の目安は業界経験者、再受験者も含みます。
このほか、不動産という大きな買い物をお客さまの生活全体の中で不安なく行なうサポートが喜ばれることがあります。
そのために、FP(フィナンシャルプランナー)や住宅ローンアドバイザーを取得する方も多いです。
不動産の資格については、こちらの記事もご参考ください。
>>不動産営業で活躍するための6つの資格!難易度も解説
対人スキル
不動産業は営業ではなくとも接客や、関連業務の方と接する機会が多い職業です。
ビジネスマナーや基本的な接客スキルを知り、業務に活かしましょう。
「自分がお客さまだったら、どのように接してほしいか」を考えてみるのもよいでしょう。
業界研究
先の目標とやる気をはっきりさせる土台として、不動産業界への研究が必要です。不動産と言っても、さまざまなジャンルの業態や職種があります。
業態や職種ごとそれぞれの仕事内容、ワークライフバランス、どのようなキャリアデザインの例があるかなどを知りましょう。
業態は売買は家を買う人が、賃貸は借りる人が、管理業は大家さんがそれぞれお客さまです。
さらに開発、投資物件売買、証券化、買取などがあります。職種は営業(アドバイザー)、事務、管理のほか他の業界と共通のバックオフィス業務もあります。
仕事内容については、こちらの記事でも解説していますので、ご参考ください。
実績
転職の場合は、具体的な数字を実績として出すと効果的です。
これまでのキャリアが不動産業界以外でも、営業成績や業務改善経験などが分かる点を極力数値化して、アピールしましょう。
これまでの実績がなければ自分のセールスポイントを具体化します。たとえば対人スキルや、クレームをうまくさばいていた経験、不動産に近い業種での働いた経験などが有効です。
やる気
ここまでご紹介した、学歴以外に必要なものの集積がやる気になって表現されると言えるでしょう。
精神論ではなく、具体的な目標に向き合い、それに向けて取り組むことが、不動産業界でうまく働くモチベーションとなってくれます。
また、数字のノルマや目標だけでなく、親身になってニーズを考えることも、やる気の源になるでしょう。
まとめ
不動産業界が学歴不問でも活躍できる魅力と、何を身に付ければ成功できるかについて解説しました。
学歴がなくとも活躍できるので、自分に合ったキャリアデザインを見つけて、ぜひ成功して頂ければと思います。
LIFULLが運営する不動産業界専門の転職支援サービスでは、宅建に挑戦中の方を含め、未経験の方のサポートも積極的に行っています。
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